荒井寛方《孔雀明王》

 現在のさくら市氏家で生まれた荒井寛方は、アジア人初のノーベル文学賞を受賞したインドの詩人タゴールの招きでインドに渡り、現地の文化人に日本画を教えたり、アジャンター石窟壁画の模写事業に携わるなどの活動をしました。
 《孔雀明王》はインドから帰国した寛方が得意とした画題のひとつで、アジャンター石窟壁画の模写作業中に野生の孔雀に出会った時の印象が作画に込められています。右手に魔除けの果実であるザクロ、左手には孔雀の羽根を持ち、孔雀に乗った明王の姿が描かれていて、鮮やかな色使いを用いた柔らかな人体の描写やリアルな孔雀の表現などに、約1年半にわたるインド滞在の成果を見てとることができます。
 虹のようなカラフルな色彩は、インドで目にした真っ赤な夕焼けや雄大な山岳風景に影響を受けていて、帰国後の寛方はエキゾチックな色彩感覚で独自の仏画を多数描き、「仏画の寛方」として人気になりました。

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