青木世一《ルソー・キット「フットボールをする人々」》

 絵画は立体や空間を平面上にあらわす芸術ですが、この作品は逆に平面であるアンリ・ルソーの絵画《フットボールをする人々》を立体に「復元」しています。グッゲンハイム美術館に所蔵されるオリジナルには存在しない絵画の「側面」を見ることもできます。
 作者である青木世一は、他にもセザンヌやゴッホ、尾形光琳などの作品も「キット化」し、「AOKIT(アオキット)」としてシリーズ展開しています。いわゆるプラモデルを模した箱の側面に見えるのは、黄色い顔がみっつ並んだ「青木制作所」のロゴマーク。このロゴマークは実在するプラモデル製作会社「TAMIYA(タミヤ)」のメーカーロゴを模しており、青木の小さな遊び心が隠されています。
 「AOKIT」の展示では、本体だけではなく、パーツをくりぬいた残りのベニヤや収納箱も一緒に置くことで、完成一歩手前の未完成な状態をインスタレーションとして見せています。完成に近づく時の「ワクワク感」を味わうための、作者のこだわりのひとつでもあります。