清水登之《パリ夜街》
現在の栃木市で生まれた清水登之は、20歳の頃に単身アメリカへ渡り、働きながら現地で絵画を学びました。アメリカで一定の実績を積んだ登之は、1924年、ついに悲願であった芸術の都・パリをめざします。 当時のパリは、世界中から多くの芸術家たちが集まる街となっていました。なかでも家賃が低く、美術学校も近かったモンパルナスには芸術家たちのアトリエが密集しており、登之もまたその地にアトリエを構えます。 《パリ夜街》は、そのアトリエからほど近い通りを描いた作品です。行き交うカップルや親子連れ、しゃがみこんだ酔っ払い、レストランをのぞき込む少年たちをユーモラスに描いており、夜の街からは多くの人間ドラマが聞こえてきそうです。夜の喧騒には目もくれず悠然と歩いている神父も、足元には真っ赤な靴下をのぞかせており、登之のユーモアを感じさせます。 |