クロード・モネ《サン=タドレスの海岸》

 今や印象派の代名詞となっている《印象・日の出》を描いたモネは、名実ともに印象派を代表する画家として知られています。1874年には、フランス政府の主催する官展、サロン・ド・パリに反発した画家たちによる「印象派展」の立ち上げに寄与し、その後の印象派の展開を牽引しました。
 《サン=タドレスの海岸》は、1864年、モネが24歳の頃の作品です。この時、モネは本格的な絵の勉強を始めたばかりで、サロンへの出品も意欲的に行っていました。本作はサロンの出品作のために描かれた小型の習作であり、故郷のル・アーブルに帰郷した際に、近郊の観光地サン=タドレスの海辺で描きあげられたものと考えられます。移りゆく空の様子や揺らめく水面に反射する光の表現は、10年後に誕生する印象派・モネを予感させるようです。