島岡達三《塩釉象嵌縄文壺》

 端正な形の壺を、鮮やかなコバルトブルーの文様が覆っています。この鮮烈な美しさは、二つの技法によって生み出されています。一つは島岡が考案した「縄文象嵌」技法。生乾きの壺に、組紐を転がして縄目のくぼみを付け、素地と異なる色の土を埋め込み、文様をあらわします。
 もう一つの技法は「塩釉」。割った竹に塩をのせ、高温の窯の中に竹を差し込んで塩をまきます。塩は炎と化合してガラス質の膜となり、釉薬の発色に艶を与え、器に付着するのです。
 島岡達三は、東京都港区に三代続いた組紐師の家に生まれました。18歳の頃に、日本民藝館で出会った民芸の美に惹かれ、1946年より濱田庄司に師事しました。50年に栃木県窯業指導所に就職し、古代土器の複製製作をきっかけに、父の組紐にも着想を得て技を磨き、1996年、重要無形文化財「民芸陶器・縄文象嵌」保持者に認定されました。