アレクサンドル・カバネル《狩の女神ディアナ》

 アレクサンドル・カバネルは、19世紀に活躍した、フランス・アカデミスムを代表する画家のひとりです。美しく滑らかな色彩と筆致により、優美な裸婦像や歴史画、神話画を多く制作しました。フランスアカデミーで成功をおさめ、時のフランス皇帝ナポレオン3世が作品を買い上げたことでも有名です。その作品《ヴィーナスの誕生》は現在、フランス・パリのオルセー美術館に所蔵されています。
 本作《狩の女神ディアナ》には、ローマ神話における狩りの女神ディアナが、狩りのあとに森で休息している姿が描かれています。頭の上には、月の女神としてのシンボル、三日月が浮かんでいます。ディアナは左手で頭を支えてリラックスしているように見えますが、右手にはまだしっかりと弓を握っており、そのすぐ脇には、とらえたばかりの獲物の毛皮が。美しい姿で描かれながらも、女神としての威厳をしっかりと伝えています。