橋本邦助《微酔》

 橋本邦助は、現在の栃木市で紙類を扱う商家に生まれました。1900年(明治33年)に上京し、白馬会溜池研究所において洋画を学びます。その後は東京美術学校(現在の東京藝術大学)に進んで黒田清輝に師事し、飛び級を2回してわずか2年で修了するほど優秀な成績を収めました。1907年(明治40年)に第一回が開かれた文展では、第1回展から第3回展まで3年連続で入賞を果たし、その活躍は一躍脚光を浴びます。
 《微酔》は、その第3回展に出品された作品です。涼し気な絞りの浴衣を着た女性は、左手にうちわを持ち、少し火照った様子で目元とほほをほんのり赤く染めています。タイトルにもあるように、少しお酒を飲み、ほろ酔い気分でいるのでしょうか。左上には、「波志毛登(はしもと)」と、自らの名前に当て字をした印がみられます。じっくり見てみると、実際には印鑑ではなく、筆で丁寧に描かれている「書き印」であることがわかります。