マイセン磁器コレクション

 マイセン磁器は、18世紀ドイツで生まれたロココ・スタイルの優雅なやきものです。「ロココ」とは、もともと岩を意味する「ロカイユ」という言葉に由来します。庭園の装飾として作られた洞窟の岩のことを指し、さまざまな曲線が生み出す、軽やかで遊びにあふれた造形が特徴です。
 当時、白い磁器は東洋でしか作られていませんでした。中国や日本の焼き物は宝物のように珍重されていたのです。ヨーロッパでも純白の磁器を作りたいと願った王様が命じて作らせたのが、マイセン磁器でした。以来300年、現在もなお盛んに製作が続けられています。
 当館は2007年に、「多気山不動尊」として知られる宇都宮市の持宝院の前住職夫人であった伊東直子氏が蒐集された、珠玉のマイセン磁器コレクション93件のご寄贈を受けました。その内容は、18世紀初頭にドイツ・ザクセンのアウグスト強王の命を受け、錬金術師・ベットガーが発明した「ベットガー炻器」に始まり、東洋への憧れを物語る「柿右衛門様式」や「シノワズリー様式」の飲食器、宮廷生活を彩った18世紀ロココ様式の彫像から、20世紀のアール・ヌーヴォーに至るまで網羅されています。特に、マイセンがもっとも隆盛を極め、芸術性を高めた18世紀半ばまでの作品を数多く含んでいる点では、当館のコレクションは、質量ともに国内稀に見るマイセンコレクションといえるでしょう。