世界遺産「日光の社寺」

 「日光の社寺」は、1999年にモロッコのマラケシュで開催された第23回世界遺産委員会において、我が国10番目の世界遺産として登録されました。登録範囲は、二荒山神社、東照宮、輪王寺の「二社一寺」及びそれらの境内地からなり、その中に国宝9棟、重要文化財94棟の計103棟の建造物群が含まれています。
 日光山は、8世紀末の仏僧勝道による日光開山以来、1250年以上の歴史を有し、古くから山岳信仰の聖地となり、自然環境と一体となって神道・仏教・徳川家墓所の複合した宗教的霊地としての歴史を現在まで継承しています。
 17世紀初めに、徳川幕府の創立者、徳川家康の霊廟である東照宮が造営されて以後、代々の将軍の社参や朝廷からの例幣使の派遣、朝鮮通信使の派遣が行われるなど、日光山は徳川将軍家を頂点とする江戸時代の政治体制を支えるための極めて重要な役割を果たしていました。
 登録資産のうち、特に東照宮と大猷院は、日本近世の宗教建築を代表するものであり、この時代の建築様式の最も重要な見本となっています。その他の建造物も、徳川幕府の祖を祠る霊廟に相応しいよう、幕府が当時の第一級の芸術家、技術者達によって造らせたものです。
 近世のはじまりを代表する華やかな装飾をふんだんに用いた日光の建築は、狩野探幽をはじめ、芸術家個人の名が多数知られるところに特徴があります。天才芸術家達の最も初期の時代の大規模な作品群が日光です。