ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《風景、タンバリンを持つ女》
ターナーは、コンスタブルと並ぶ19世紀イギリスを代表する風景画家です。幼い頃から風景を描く才能を発揮し、14歳の頃にはすでにロイヤル・アカデミーの美術学校に入学を許されるほどの才能を認められます。その後、26歳にしてロイヤル・アカデミー正会員となるなど、若くして成功を収めました。ターナーは自然の「崇高さ」を描き出すことを志し、歴史画と同じように人の感情に強く働きかけるような風景画をめざしました。 《風景、タンバリンを持つ女》は、1807年から出版が開始された版画集『研鑽の書(リベル・ストゥディオルム)』に基づいて描かれた、最晩年の油彩画のひとつです。30代の頃に制作した版画では、樹々に生い茂る枝葉の様子まで細かく描写されていましたが、本作では晩年のターナーの特徴である滲むような色彩でぼかされています。画面全体が光に溶け込むような描写は、ターナー晩年の到達点とも言えるでしょう。 |