内田進久《残照》
内田進久は埼玉県に生まれ、東京美術学校図画科を卒業後、栃木県師範学校に図画教諭として赴任するため宇都宮に移りました。エッチングという腐食銅版画の技法を習得し、大谷の採石場や宇都宮の街の風景、益子の窯など栃木県の風景を多く描きました。 この《残照》は東武宇都宮駅近くに立つ松ヶ峰教会を描いたもの。タイトルのとおり空には夕暮に光る雲が描かれており、どこかノスタルジックな雰囲気を感じさせ、夕陽を受けて影になる教会は存在感があります。列をなして歩くのはミサから帰る人たちでしょうか。洋服の人の中には和服の人も混ざっています。内田進久が描いた風景は正確な記録としての性質がある一方、そこに生きた人々の呼吸を感じさせる温かみがあります。今は変わってしまった風景と見比べながら街を散歩するのも作品の楽しみ方の一つかもしれません。 |