アルフレッド・シスレー《冬の夕日(サン=マメスのセーヌ河)》
日本でも人気の高い印象派。しかし、印象派の画家たちの多くは、時代を経るにしたがってその様式を変え、次第に独自の画風へと移っていきます。その中で、生涯を通じて印象主義を徹底した画家が、アルフレッド・シスレーです。シスレーはイギリス国籍の両親のもとパリで生まれます。17歳の頃にロンドンへ渡り、ターナーやコンスタブルの作品に夢中になりました。4年後にパリへ戻り、画塾で後に印象派の代表的な画家となるクロード・モネらと出会います。 本作では、パリから南東に60km、セーヌ河とロワン河の合流地点にあたるサン=マメスの風景が描かれています。印象派の表現の特徴である筆触分割、つまり色をパレットの上で混ぜることなく、点描のように色を分割してカンヴァスに乗せていく技法を巧みに用いています。通常、絵の具は混ぜると暗く濁ってしまいますが、印象派の画家たちはこの筆触分割の技法を用いることにより、絵具が本来持つ明るい色彩をそのままに、戸外にあふれる光を表現しました。本作でも、夕暮れ時にあらわれる一瞬の光景を落ち着いた配色でノスタルジックに写し取っています。 |